転職の面接での重要ポイント「面接官の3つの視点」を解説

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面接と聞くと多くの人が、志望動機はこう言おう、強みを聞かれたらこれを答えよう、など具体的な質問や回答から考えてしまいます。しかし、それよりも重要なことがあります。それは、面接官は次の3つの視点で応募者を判断しているという事実です。

  • 能力
  • やる気
  • 価値観

面接において採用されるためにまず知るべきことは、この3つの視点という普遍的なルールを知ることです。今回はこの3つの視点を、実際の面接の現場での話をもとに解説したいと思います。

能力とは何か

能力とは職務を通じた経験、スキル、ノウハウなどです。転職ではそう言った能力がある即戦力が有利ですが、だからと言って同じ職種や業界での経験者が採用されるとは限りません。では応募者の能力をどう判断しているのかを、実際の会社での採用事例をもとに考えてみます。

経験者が落とされる理由

A社はX線、超音波、MRIなどの病院で使用する機器を製造販売するメーカーです。営業部長のTさんは、顧客が病院で商品の専門性も高いことから医療業界の営業経験者を採用したいと考えていました。

ある時、医療業界での営業経験者の応募がありました。応募者は論理的な人で、こちらの質問意図に対して的確で非常に分かりやすかったのです。過去の経歴から営業内容の説明まで仔細に語り、過去の提案書まで持参する徹底ぶりでした。しかし、T部長はこの方の採用を見送りました。

「たしかに顧客である病院のことや、医療機器の内容にも詳しいんだけど…。営業スタイルがあまりにも違いすぎるんだよなぁ~。応募者は業界でも大手の会社にいたから、基本は大病院で事務長や病院長に対するトップアプローチらしいんだよ。提案も、商品の幅が広いから顧客の要望に対して機器1つでなく、複数商品を組み合わせたソリューション型の提案なんだよ。」

「それに対して、ウチのメインの客層は小中規模の病院だし。特定の商品を販売する事に特化して営業部隊やサポート部隊を組んでるからね。営業スタイルとしては、病院内の多くの人から情報収集したり、顔を売ったりして、そうやって外堀を埋めていく中で契約につなげていく形だから、論理的で大上段からの提案よりも、人柄と情報収集能力に長けている人が欲しいんだよ。」

結局、T部長は業界経験者でなくITソフトのパッケージ営業をされている方を採用しました。部長は次のように言っていました。

「販売していたITソフトはカスタマイズありきの商品だから、担当者以外にも顧客側の技術者や経営者、関係部署に要件を聞きにいく営業だったらしいんだよ。しかも、かなり無茶な要求をしてくる人も多い上に、顧客訪問先の派閥などパワーバランスを見て営業してたらしい。まさに、ウチの営業そのものだよ!まぁ、業界知識なんかは研修で何とかするよ。」

募集企業のめる能力を知ることが重要

転職の面接では通常面接は配属される部署の責任者や上司になります。今回お伝えしたA社も同じでした。そして、今回のT部長のように採用したいと思っている人物像はかなり明確な場合が多いです。自身の経験や、成果を出してきた部下などから、具体的にどういった能力が必要なのかを理解しているのです。

今回の例でもコミュニケーション能力や提案力という、転職シーンでは当たり前のように使われる言葉でも職務内容によって全く違うものになります。自分では、強みをしっかりとアピールできたと思っていても企業側の求める能力に合致しなければ採用にはいたりません。

現実でもこのような、求める能力とアピールしている能力が全く噛み合っていない面接は非常に多いです。逆に言えば、その部分が上手く合えば未経験でも、経験者である応募者を出し抜き採用される可能性は高いのです。

やる気とは何か

転職エージェントは面接終了後に応募者の合否を募集企業側に確認する為、問合せを行います。その時、担当者は次のような理由で採用を見送ることが良くあります。

「う~ん、悪くは無いんだけど、何かウチで働きたいっていうやる気が感じられないんだよねぇ」

募集企業からすると、自社で働きたいと思う人を採用したいという気持ち当たり前だと言えます。仕事で経験やスキルが無くともやる気を出すことで成果につながることは良くあることだからです。では、募集企業の言うやる気とは何なのでしょうか?

やりたいコトや目標は特に無いんです

27歳女性のKさんは現在派遣社員として営業事務の仕事についています。将来が見えないこの時代に、やはり雇用が安定している正社員になりたいと転職活動をはじめました。書類選考は通過しても面接で採用に至らない、そんな悩みを持って相談に訪れました。

K子さんは、頭の回転が早く人柄も朗らかで事務職としては優秀だと感じられました。用意された職務経歴書を拝見しても、特に直す必要もありません。話をした感じ、面接が苦手なようにも思えなかったので、わたしも何故採用されないのか不思議に思いました。

しかし、案件をご紹介しようとした時にやっと理由がわかりました。Kさんには応募する企業に対するやる気が見えなかったのです。これでは、企業側も採用したいとは思いません。そこで何とかKさんに、応募企業に対するやる気を感じてもらうようにしました。

「特に、これといった要望は無いです。事務職だったら問題ないです。とにかく正社員になりたいんで。」

「しかしKさん、それでは企業側もKさんのやる気を感じられないと思いますよ。」

「う~ん、でも本当に思いつかないんですよね。理想のキャリアとか自分の目標とかがあるわけでもないんで…、逆にどうすればいいですかねぇ。」

「普段仕事をしていて、興味のることや工夫したことってありますか?どんな小さなことでも良いですよ。」

「興味や工夫ですか?う~ん、何だろう。あっ!営業さんが忙しいからお客さんの提案書を作ったりすることがあるんですよ、その時に営業さんから貰ったお客さんのデータをエクセルで纏めたり、グラフ化したりして渡したら営業さんが喜んでましたね。パソコンで作業するのが好きで、エクセルで営業成績やスケジュールを作ってくれって言われたんで、やっていると以外にハマっていったんですよね。みんなスゴイって褒めてくれるし、調子にのって結構詳しくなりました。」

「じゃあ、この仕事なんてどうですか?インターネット系の会社なんですが、広告のデータをエクセルで管理してそれを元に営業がお客さんに追加提案するんですけど、営業がその作業に手が回らないんで、新しくサポート部門を設けることになったんです。まだ決まった手法があるわけでは無いんで、管理しやすく分析しやすい形を模索していくようにはなるんですが…。」

「けっこう面白いかも!これ、渡しでも応募できますかね。」

後日、担当者から連絡がありKさんは見事採用されました。担当者は次のように言っていました。

「他の応募者はエクセルのこの機能が使えますといったアピールばかりでしたね。Kさんは今ある書式はどうなっていますかって質問してきたので、書式を見せたら、そこから打ち合わせみたいになっちゃって、この人なら自主的に取組んで貰えると思って即採用を決めましたよ!」

やる気の探し方は今の仕事の中にある

募集企業としては応募者には仕事を通じて会社に貢献して欲しいと思っています。その為には、やはり仕事に対して主体性を持って取組んでほしいと考えています。主体性というと仕事に意識が高いと思いがちですが、難しいことではありません。

K子さんのように、ちょっとした興味や工夫を実行するコトも主体性です。そのような仕事を応募先の企業でやってみたいと素直に伝えれば、そこから十分にやる気は感じられるのです。

価値観とは何か

最後にお伝えする価値観とは、転職者の性格や物事に対する考え方などです。何故、募集企業はそれを気にするのでしょう。実はこの価値観が企業風土に合わないと、転職してもすぐ辞めてしまうという事が少なくありません。逆に、その会社が自分に合うことで活躍できる人も多いです。

組織は人間同士のつながりでできている

23歳のSさんは新卒一年目で、今すぐにでも会社を辞めたいと相談に訪れました。一年目なりに、成果は上げており仕事自体は大変だがやりがいもあるとのこと。しかし、会社が合わないとのことでした。上司だけで無く、同僚とも合わないのです。わたしは、Sさんが所属する企業も担当していたので、たしかにSさんには合わないだろうと思いました。

Sさんの所属する企業はイケイケのIT企業です。ガッツのあるタイプが多く、社内も体育会系で社員同士で良く飲みにいくような会社です。一方、Sさんは大人しいタイプ。社内でも孤立しており、上司に至っては大人しいSさんの人間性を否定する言葉を投げかけてくるそうです。

そんなSさんには、同じIT企業ですが全く企業風土が違うY社を紹介しました。Y社は社長はじめ従業員全員が技術者で、営業を欲していました。今まで何人か採用しましたが、全て同じ理由で辞めていきました。その理由は、会社と合わないというものでした。逆に、Sさんには合うと思いました。

Sさんは大学では理系で、自分でパソコンを組み立てたり、スマホなどのデジタル機器が大好きでした。Y社を訪問したときも、社員同士がスマホなどの話を熱く語っていましたので、恐らく仕事以外でも話が合うと思ったのです。そして、結果は採用とのことでした。

一年後、再度Y社から人を採用したいと連絡を受けた時に、Sさんのことを聞きました。Sさんは直ぐに会社に馴染んだそうです。しかも技術者と仲が良いので色々な技術を教えて貰い、知識量が増えたためお客さんと技術的な部分で非常に深いレベルで話せるため、大型の契約も取ってきたとの事です。

価値観は面接だけでなく入社後の未来を決める

時間もお金も掛けて採用した人が活躍できなかったり辞めてしまうことは、募集企業からすると採用における失敗です。組織の一員として働く上で、誰とも関わらない仕事はほとんどありません。だからこそ、価値観と企業風土が合わないことは働く上では致命的です。

事例のように価値観が合うかどうかは面接だけの話ではなく、入社後にも大きく関わる内容です。その為、自身の価値観と募集企業の風土の見極めは面接官だけでなく、応募者にも重要な視点です。

質問に対する3つの視点の関係性

3つの視点を解説しましたが、実際に面接で質問された際は1つの質問で常に3つの視点を持って確認されている訳ではありません。ですから、自己PRでは能力を見られているな、仕事において重視している点は?の質問には価値観を見られているな、とは思わないで下さい。

志望動機に対する3つの視点

例えば、「当社を志望した理由をお聞かせください」という質問に対して以下のように答えたとします。

システムエンジニアとして多くの関係者と調整や交渉を繰り返しながら期限内でのプロジェクト遂行を行ってきました。その経験を活かし、御社で経営に近い判断を行う業務改善コンサルタントとして活躍していきたいと思い志望しました。又、経験や年齢に関係なく大規模プロジェクトに参加する機会のある企業風土に非常に魅力を感じております。

この転職者の回答からは3つの視点の内、多くの関係者との調整力や交渉力という能力、経験や年齢にとらわれずチャレンジしたいという価値観の2つが判断できます。この回答を次のように変えてみるとどうなるでしょうか。

システムエンジニアとして常に事業利益を元に判断を行ってきました。御社で経営に近い判断を行う業務改善コンサルタントとして活躍していきたいと思い志望しました。いずれは御社で販売と物流の業務改善システム構築に取組みたいと考えています。

今度は、具体的な仕事のプランまで踏み込んでおり、応募者の仕事に対するやる気が感じられるようになりました。

まとめ

面接における重要ポイントである3つの視点。その内容について解説しましたが、最後に簡単にまとめておきます。

  • 面接官は能力、やる気、価値観の3つの視点で判断する
  • 募集企業の求める能力に合致しないと採用には至らない
  • 興味があること、工夫したコトにやる気を探すヒントがある
  • 価値観が合う会社には採用されやすく、入社後も活躍しやすい
  • 特定の質問に対して特定の視点を持って見ているわけではない

面接では様々な質問がなされますが、面接官は応募者の回答などを3つの視点からチェックしています。是非この3つの視点を意識してみて下さい、それが採用に近づく面接の第一歩です。